読書と音楽
絶望のときには絶望の音楽が癒やしにつながるという考え方には私も賛成である。とはいえ、「絶望以外の何物でもない」というような音楽はなかなか思い当たらない。数年前、私自身大きな挫折と絶望を味わったことがある。そのときに私を癒やした歌は、宇多田ヒカルの「ぼくはくま」だった。
テンポがゆったりしていてメロディがやさしく、押し付けがましい主張がないのに深い思索と内省を促す詩も、聴く者を癒やしへと導く確かな力を持った歌である。絶望から立ち直ろうとするときばかりではなく、読書のBGMとしても頻繁に流している。
「ぼくはくま」を収録するアルバム「Heart Station」は曲順もよい。思うに任せぬ日常に疲れたとき1曲目から順に耳を傾けていると、歩くスピードで悲しみに寄り添いながら、少しずつ立ち直りへ導いてくれるように感じる。特に「ぼくはくま」と「虹色バス」のつなぎは秀逸で、最後の「Flavor of Life」で再び悲しみを咀嚼、吸収してまた新たな一歩を踏み出そうという気分にさせてもらえる。
さて、優れた物語に触れながらどんな音楽を聴き、どんな物語を紡いでいこうか。そんなことを考えさせられもする一冊、それが「絶望読書」である。

